顎関節症とは顎関節や咀嚼筋の疼痛、関節雑音、開口障害または顎運動異常を主要症候とする疾患であり、われわれは早くから顎関節造影撮影の導入、顎関節鏡視法による関節腔内の内視鏡的観察の開始、CT、MRIによる画像診断に取り組み、とりわけ顎関節鏡視下手術は、顎関節症の病態解明に大きな進展を与え、本疾患の治療に対し積極的に取り組み治療法を確立し、その臨床成績を報告している。基礎的研究に関しては、顎関節症の病態を細胞外基質の免疫組織化学染色や細胞生物学的研究により、滑膜や関節円板の特異的な病態を解明してきた。また、顎関節に対する外科的治療による関節構造の変化を動物実験により、顎関節構造の形態変化を組織学的、組織化学的に観察を行い、さらに組織化学的変化における構成細胞の動態について免疫組織化学的検討により解明してきた。しかしながら、顎関節症の成因はまだ解明されたとはいえず、さらなる研究が望まれ、また、克駅解析による顎関節症の病態診断の分子生物学的アプローチ、関節円板前方転位の動物実験モデルの試み、顎関節滑膜の構造、機能についての解析などの今後の研究に期待される。

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