損傷された関節軟骨は元の硝子軟骨で修復されない。また、修復のために様々な方法が用いられているが満足のいく方法はない。軟骨文化の過程において、発生の初期において未分化間葉系細胞が将来軟骨のできあがる場所で凝集することから始まる。その凝集塊は位置に固有な増殖と分化を行い、各々の形を持った軟骨原基が形成される。軟骨原基はこの段階ですでにその形が将来の骨の形を表しているため、骨格の鋳型と呼ばれる。さらに発生の進行とともに、この軟骨の鋳型の中心部では軟骨細胞が増殖、分化、肥大する。甲状腺ホルモンは頭蓋骨の発達、成長そして代謝に大きな影響を及ぼし、ヒトにおいて主なものはトリヨードサイロニン(T3)とサイロキシン(T4)である。甲状腺の分泌機能が不調になれば人の成長を含む頭蓋骨異常の最も共通した原因となる。甲状腺ホルモンは軟骨の成長を刺激し、』特に骨の増殖の最終的な分化を刺激する。T4はそのほとんどが甲状腺から分泌産生される。T4は骨の成長版に影響を及ぼすと報告されており、その活性はT3の作用と同じである。成長ホルモン(GH)は直接成長版に影響して縦の成長を刺激する。しかし、GHは骨、軟骨を誘導することから軟骨文化に関与しているのは明らかである。
 われわれはまた軟骨分化、肥大化における骨形成因子、甲状腺ホルモンおよび成長ホルモンの役割をより生体に近い環境の得られる3次元培養によって明らかにしたいと考えており、本研究目的の上記の目標が達成できれば、近い将来臨床での軟骨、骨組織再生において、非常に有用なものとなり、治療困難であった骨形成性疾患や、軟骨、骨再建における新治療法の開発に寄与するものと思われる。また、智歯あるいは脱落乳歯歯髄細胞を用いて軟骨再生の試みについても準備を始めている。

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